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小説『椿姫』の中に天使を見る

Category: その他

アレクサンドル・デュマ・フィスの名作小説『椿姫』(1848)を読んでみました。新潮文庫から出ている、新庄嘉章さん訳のものです。

最後はもう涙が止まらなかったです。

この本を読む前に海外ドラマの「アグリー・ベティー」を見ていたのですが、そのドラマの中での、両想いなのにすれ違いで結ばれない恋愛を、『椿姫』と重ねて読んでしまいました。

私は恋愛経験乏しいので、自分の実体験を重ねることは難しかったですが、小さい頃真剣に読んでいた少女漫画を思い出させるような、胸が締め付けられるような気持ちを久しぶりに体験できた気がします(;^ω^)

あくまでも私が初見でこの作品を読み、思ったことを書いていくので、間違った解釈もあるかもしれませんので、ご理解の上読んでください。

小説『椿姫』のストーリー

※ここでは、おおまかなストーリーを書いていくので、ネタバレが嫌な方は見ないようにしてください。

主人公「わたし」は、ある娼婦の遺品が競売に出されており、それらの元の持ち主に興味がわく。結局「わたし」は、競売に出されていた小説『マノン・レスコー』を競り落とすのだが、唯一一緒になって競り落とそうとしていた青年がいた。競売がすっかり落ち着いた頃、その青男が「わたし」を訪ねてきて、『マノン・レスコー』の本に書かれていたサインがその青年アルマン・デュバルの物であるというのだった。どうしてもその本が欲しいというので、「わたし」は快く本を譲り、どんな思い入れがその本に、娼婦にあるのかという話を聞くことになる。

ここから青年アルマンの話が始まります↓

良家生まれの青年アルマンは、パリで美しい娼婦マルグリット・ゴーチエに恋をする。マルグリットは、パリではその名を知らない男はいないというほど、かつてはどの男の物でもあった女だった。お近づきになりたいアルマンは友人に頼んでマルグリットを紹介してもらうが、アルマンは緊張して変な態度をとってしまい、マルグリットに笑いものにされてしまう。

その後何日かマルグリットの姿を見かけないので、気になったアルマンは友人に尋ねる。マルグリットは病気を患っているらしく、かなり容態が悪いようだった。アルマンは、毎日マルグリットの家の前まで行って容態だけをきいて帰る日々を送った。

マルグリットが回復したと聞いたアルマンは、彼女に会うべく劇場に行く。マルグリットと仲の良いプリュダンスという女に話しかけ、マルグリットと再会することになる。

ここからアルマンとマルグリットの関係が始まります。↓

マルグリットを囲っていた伯爵や公爵に嫉妬をしたり、マルグリットに対して疑念を抱いたりするアルマンだったが、マルグリットを真剣に思う姿にマルグリットもアルマンのことを大切に思うようになる。マルグリットは、一度もアルマンに金をせびったりすることはなかった。

パリを離れて2人きりの生活を始めたが、かつてお金を用意してくれていた公爵にまで2人の関係が耳に入っており、もう援助してもらえなかった。賭博でいくらか稼いだアルマンだったが、マルグリットはアルマンに内緒で馬やカシミヤのショールを売り始める。マルグリットには借金があったのだった。それを知ったアルマンは、父からもらう年収をマルグリットに譲り渡そうとするが、父に反対される。

アルマンの父は、身分の違う2人の関係には反対であった。娼婦と恋愛関係にあるとなると、世間ではよく思われない。父との話し合いが終わり、家に帰ったアルマンだったが、マルグリットが何も言わずにいなくなっていた。嫌な予感がするも、すぐ帰ってくるだろうとマルグリットの帰りを待つアルマンであったが、マルグリットが帰ってくることはなかった。

アルマンとマルグリットの関係が終わる

マルグリットを探しに出かけたアルマンは、手紙を受け取る。それは、もう2人の関係は終わりだという別れの手紙だった。ショックを受けたアルマンは、この悲しみを父なら慰めてくれるだろうと父のもとへ帰る。しばらくの間父のもとで暮らすアルマンだったが、マルグリットのことが気になるのでパリにもどってみる。

パリで、今まで見たこともない金髪の女と嬉しそうに歩くマルグリットの姿を見かけるアルマン。幸せそうなマルグリットを見たアルマンは、どうにかマルグリットを苦しめてやろうと、マルグリットと一緒に歩いていた金髪の女オランプの囲いを始める。

オランプと一緒にいるのをマルグリットに見せつけたり、オランプにマルグリットの悪口を言わせたり、あらゆる手でマルグリットを苦しめるアルマン。マルグリットはそれに対して仕返しもせずに、「もう耐えられないのでこれ以上苦しめるのは勘弁してほしい」とアルマンに頼みに来る。

マルグリットのことをまだ愛していたアルマンは復縁をせまるが、マルグリットは立ち去ってしまう。その後、マルグリットがイギリスへたってしまったことを知り、落ち込んだアルマンも遠くへ旅に行くことになる。

旅の途中、マルグリットの病気が悪化していることを聞いたアルマンはマルグリットへ手紙を書き、出発した。

アルマンに会えないマルグリットの容態は悪化するばかりだった

マルグリットはずっとベッドから手紙と日記を書き続けていた。日に日に容態が悪化する中、借金返済がまだ済んでいないと男たちが部屋にあるありとあらゆる物を差し押さえ始めていた。以前まで仲良くしていたプリュダンスも、マルグリットから金が引き出せないとわかると、顔も見せなくなっていた。

結局、マルグリットは愛するアルマンにも、友人だと思っていた人たちにも、誰にも看取られることなく死んでいく。ただひとり、マルグリットを熱心に看病していたジュリーにマルグリットは手記を託していた。

マルグリットの手記の内容↓

マルグリットはアルマンが会いに来てくれたら、病気が良くなるはずだと、ずっとアルマンを待っていた。

マルグリットは本当にアルマンを愛していたのだが、アルマンの知らないところでアルマンの父がマルグリットにお願いをしていた。本当に息子を愛しているのなら、別れてくれということを。また、アルマンには結婚を控えた天使のような妹がおり、その結婚相手が、親族が娼婦と関わりがあるのなら結婚しないといっているということをマルグリットは聞かされていた。

本当にアルマンを愛しているという証拠に、そしてアルマンの妹の幸せのために、マルグリットは身を引くことを承諾したのだった。そして、アルマンがマルグリットを憎み、苦しめようとすればするほど、アルマンがまだ自分を愛してくれていると思えた。

その真実を知ったのはマルグリットが死んだあとである。マルグリットは愛してるとアルマンに言えずに孤独に生涯を終え、アルマンはもう二度とマルグリットにあうことはできなかった。

そして、作品の冒頭に出てきた競売へつながっている。

小説『椿姫』を読んでの感想

椿姫ことマルグリットの印象

最初マルグリットがアルマンを笑いものにするところでは、「品がない」という印象でした。しかし、読み進めていくとどんどん印象が変わりました。正直、物語の最後の方まで「本当に好きなの?」と少し疑っていたんですが(;^ω^)、彼女がアルマンにお金をせびらなかったこと、自分の大事な所持品までアルマンに黙って売っていたことを考えると、娼婦と囲いという関係でなかったことは明らかです。

そして、彼女が品物ではなく、一人の女として愛してくれる相手ができたというのに、それを相手のために手放す姿は、まさに天使です。

アルマンも主人公の「わたし」に、マルグリットは卑しい娼婦なんかじゃなく、天使のような女だったと語っています。

彼女自身、自分のことを人間ではなくただの品物だと語る場面もあり、娼婦は汚れたもの、罪であると思っていました。なので、アルマンとの恋で処女であった頃の気持ちを思い出し、罪を償うためにアルマンの幸せを願ったのでした。

そんな彼女を天使といわずにはいられません(;_;)

青年アルマンの嫉妬心

マルグリットを囲っている男たちに何度も嫉妬し、マルグリットが嘘をついてその男たちと会っているんじゃないかと疑ったりするアルマン。そしてマルグリットに別れを告げられ、パリで幸せそうにしているマルグリットに仕返ししてやろうとするアルマン。

もう、男ってなんて子供なの!といいたくなる。

今までわたしは、じぶんのほうがあの女を許してやるのだとばっかり思っていましたが、今日になってみますと、このわたしこそ、あの女から許してもらうだけの価値もないものだということがわかりました。

引用元: 『椿姫』 新庄嘉章 訳

このようにアルマンは自分の行いをひどく後悔します。しかし、それに気づいた頃にはもうマルグリットはいないんですけどね。

嫉妬するのも、一方的に別れを告げたマルグリットを苦しませようとするのも、可愛さ余って憎さ100倍というやつですね。自分がいないと生きていけないって気づいてほしいという気持ちの裏返しですよね。それを知っていたマルグリットは、アルマンが嫌がらせをしてきたことを、まだ私のことを愛してくれている証拠だと思えてうれしかった。でも、だからこそ、余計に別れがつらかったと思います。



『椿姫』の中での神様という存在

神は、教育によって善というものを教えられなかった女のために彼女らをごじぶんのもとに導く二つの道をほとんどつねに作っておられるものである。その二つの道とは、悲しみと恋である

引用元: 『椿姫』

マルグリットのような女性たちがなにかのはずみで処女から娼婦になって罪を犯したとしても、神様はそれを償うためのふたつの道を用意しているよという言葉が出てきます。マルグリットはアルマンに出会い、本当の恋に出会い、そして悲しく亡くなっていきました。マルグリットはきっと神様のもとに行けたんですね!

神は、かつて一度も罪を犯したことのない百人の正しい人びとよりも、ひとりの罪人の悔い改めたのを喜びたもうものである…

引用元: 『椿姫』

ただ何事もなく生きてきた人々よりも、マルグリットが神様のもとへ行くほうが神様にとっては喜ばしいことということですね。

小説『椿姫』の感想 まとめ

誰かが幸せになるには、犠牲が必要になるんですよね。もし、マルグリットがアルマンの父親の頼みを断って二人で駆け落ちしていたら、悲しむのは父親と妹ですね。でもマルグリットは病気を患っていましたから、駆け落ちしたとしても二人の幸せは長くは続かなかったかもしれません。なにが誰の幸せになるかはわからないですが、マルグリットの自分を犠牲にしてでも誰かを思いやる気持ちが、称賛すべき点ですよね。

私の中では、本当にマルグリットは純粋で、天使に思えます。この記事を書いている間も、マルグリットの最後を思い出すと涙が~(´-ω-`) そんな女性だからこそ、アルマンは好きになったのかもしれません。気づいたのは彼女が死んでしまった後だったけれど、彼が生きている間はずっとマルグリットへの愛する気持ちが残っているはずです。

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